花いけだより

大会レポート✴︎香川大会2023

2023年8月19日(土)、ユープラザうたづ ハーモニーホールにて「全国高校生花いけバトル 香川大会2023」「第七回 全国高校生花いけバトル 香川大会」が開催されました。花いけバトル発祥の地・香川ならではのハイレベルな戦いの中で、自分らしい花いけを目指して奮闘した11校17チームの高校生バトラーの勇姿をお届けします。

地方大会では、その地域ならではの特色ある花材も魅力のひとつ。今大会の会場にもステージを彩るように、たくさんの花材が並びました。「この日に合わせて一番美しく咲くように」「新品種を高校生にも生けてもらいたい」。生産者の方の思いを受け取り、高校生バトラーは自由に思いきりよく花をいけていきます。

予選ラウンドから、スピード感のある展開に。ゴングがなるや否や駆け出して、立派な枝ぶりのオリーブや夏はぜなど大きな枝ものをとってくる。なかには高さ3mに及ぶ竹を一度に3本運ぶ高校生バトラーの姿もありました。

大会冒頭に、審査員でフラワーデザイナー・宮永英之さんが「1年の練習の成果がたった5分で試されるのが高校生花いけバトル」と語ったように、やり直しの効かない即興の5分間は不安だらけかもしれません。それでも自分らしい花いけを目指して、制服のシャツをはためかせながら一直線に走る高校生バトラーたち。花をいけきった5分間には日々の練習で培った技術や、育んできたチームワーク、そして花を愛でる心の全部がきっと詰まっています。

「思い通りにいかなくて焦った」という声がよく聞かれた予選ラウンド。枝の曲がり方や花の表情には、ひとつとして同じものはありません。そのため、考えてきた構成が実現できないこともしばしば。それでも事前の作戦にこだわることよりも、目の前にある一つひとつの花と向き合うことを大切にし、臨機応変にいけきる姿が印象的でした。

歴史のある香川大会ですが、ブーケを作り器に飾るという、新しい花いけに挑む姿勢も見せてくれました。ふんわりとしたかすみ草にクルクマ、デルフィニウムの花を糸でまとめて、調和のある作品を仕上げました。

常連校のバトラーから、はじめて花をいけるというバトラーまで、バラエティあふれるメンバーが集う「高校生花いけバトル」だからこそ見られた、個性あふれる新しいアプローチを嬉しく思います。

予選に続いて、上位4チームによる決勝ラウンドが行われました。高得点で通過したチームも、予選ラウンドを経て感じた学びを力に変えて、さらに進化したダイナミックな花いけを見せてくれました。

「直前にひらめいたアイデアに挑戦した」と語ったのは「飯山 花笑み」黒川さん。準決勝は先鋒・次鋒それぞれによる個人作品ですが、2つの器の間にドラゴンヤナギを横たえることで作品に調和を生み出しました。対する「ことりな」は、同じ花材を使うことで全体のトーンを調整。それぞれのチームの構成力の高さを感じるひと工夫でした。

準決勝は、英明高等学校の先輩・後輩対決に。器の口が狭くバランスのとりにくい花器で、あえて竹を立たせようとしたのは先輩チーム「絃琉。」。一度はすっくとまっすぐ立ったものの、ゴング直前にぐらつき、そのままタイムアップ。「練習ではできたのに……」と悔しさをにじませるも、すぐに「後輩たちがすごくいい作品を作ってくれた」と気持ちよくエールを送る姿に、観客席からも拍手が送られました。

そして迎えた決勝戦。まだ優勝経験のない英明高等学校の「英明烈火」に対するは、大会3連覇の偉業を狙う香川県立飯山高等学校の「飯山 花笑み」。お互いに一歩も引くことなく、高みを目指して花をいけた決勝戦でした。

先鋒戦。予選ラウンドから果敢な花いけを見せてくれた「英明烈花」田村さんがステージの床から伸びるように2本の竹を生ければ、対する「飯山 花笑み」黒川さんは器から立ち上がるように竹を配置。スケールの大きい作品に仕上げる情熱とパワフルさがみなぎった見事な花いけでした。

最後の1秒まで全力でいけきった先鋒戦。得点発表の直前に「飯山 花笑み」黒川さんの作品が倒れてしまうアクシデントが。得点には影響しなかったものの、高校生バトラーたちが限界に挑戦していることが伝わるワンシーンに、観客席まで緊張感が伝わるようでした。

そして迎えた次鋒戦。花を1つ入れては2、3歩下がって作品を見る冷静さが光った「飯山 花笑み」秦さんと、何度もトライ&エラーを繰り返して作品を仕上げるひたむきな姿勢が印象的だった「英明烈花」松村さん。

白熱の先鋒戦と次鋒戦を経て、両者を合計した得点は、なんと505対505の同点に。観客席からもどよめきがおこります。勝負の行方は、代表者同士による一騎討ち「優勝決定戦」へ託されました。

優勝した香川県立飯山高等学校「飯山 花笑み」のふたり。決勝・先鋒戦後に作品が倒れてしまった不安を断ち切り、優勝決定戦でも見事な作品を仕上げた黒川さんと、涙を拭って「チームメイトに感謝です」と語った秦さん。史上初の3連覇おめでとうございます!

準優勝は、英明高等学校「英明烈花」でした。実は花いけバトル初出場の2人。5分間すべてを使い切って挑戦を続けるアグレッシブな姿勢から、たくさんの勇気をもらいました。「来年は絶対優勝したい」とリベンジを誓う頼もしい表情が印象的です。また来年お待ちしています!

香川県ならではの美しい花材が揃い、それぞれが力を出し切った香川大会。7回目となる今大会、ハイレベルな戦いの中でも「花をいけたい!」という純粋な気持ちを肌で感じることができました。

 

3年生の皆さん、お疲れ様でした!総評で審査員のいけばな作家・伊藤庭花さんが語ってくれたように、花は一生楽しめるものです。これからも花を生け続けてくれたら嬉しいです。

1、2年生の皆さん。お花の楽しさ、美しさを味わって、また来年成長した姿が見られることを楽しみにしています!