花いけだより

大会レポート✴︎茨城大会2023

2023年 10⽉ 28⽇(⼟)、⽔⼾市⺠会館 展⽰室にて「全国高校生花いけバトル茨城大会2023」が行われました。ようやく秋らしくなったこの日、茨城県11校、群馬県1校の12校31チームの高校生バトラーが集結し、熱い闘いを繰り広げました。茨城県といえば枝ものの産地。会場には深まる秋を象徴するような立派な枝ものが並びます。

初戦から、枝垂れ柳に北山杉、雲龍柳、ドラゴン柳と秋ならではの枝物の数々に挑戦する高校生バトラーたち。大きな花材をどう配置し、イメージ通りの作品に仕上げるか。闘いを待つ高校生バトラーはもちろん、会場の観客も真剣な眼差しで見つめます。

流木、枯れ枝、色付けされた枝もの…。大きな花材は形も表情も個性的でひとつとして同じものはありません。その個性をどう生かすか、限られた時間の中で瞬時に見極める高校生バトラーたち。器の中心で天高くそそり立つ竹、器のまわりにとぐろを巻くように配置された流木、重心のバランス、全体のバランスを取りながらダイナミックな作品に仕上げます。

大きな枝ものを器にいけたものの、思ったようにバランスが取れず苦戦する姿も。とっさの判断で別の枝ものを取りにいく人もいれば、同じ枝ものにゴングぎりぎりまで何度もチャレンジする人もいます。花材と同じように、闘い方もそれぞれ個性的。「このままいくのか?」「次鋒に託すのか?」。迷い、選択、判断…。その緊張感が会場全体を包みます。

思った通りの花いけができて思わず笑顔がこぼれる様子に、見ているこちらまで嬉しくなります。父親の誕生日に捧げる作品を仕上げた高校生バトラーも。プレゼントしたい誰かを思い浮かべることで、作品のイメージを膨らませます。大会に参加する全員が、それぞれのやり方で思いっきりバトルを楽しみます。

器の口の大きさを見て花材を選びます。その場の判断でイメージの修正を迫られることも多々。先鋒が作ったベースに次鋒が色付けし作品を完成させる見事なチームワークに、会場から拍手が起こります。

バトンタッチが迫り、焦りのあまり器を倒しそうになり焦る様子に、見ているこちらもハラハラ。大きな枝ものや流木が目立った茨城大会では、ダイナミックで挑戦的な花いけに果敢に挑戦するチームが多くみられました。

今回は予選11ラウンドの長丁場。予選終盤になってはじめて登場する花材もたくさんありました。どの花材を選ぶかもチームの個性。お手本はありません。それまで誰も使わなかった花材を、自分たちの感性で作品に昇華させます。

茨城大会史上最多の31チームが参加した予選ラウンドも最終戦。出番まで時間があったにも関わらず、高校生バトラーたちは気合十分。果敢に、攻めの花いけを繰り広げます。どのチームも動きのある、魅せる花いけで、最後まで飽きさせないバトルを見せてくれました。

長かった予選ラウンドを経て4チームが準決勝に進出。茨城大会では、準決勝から地元・茨城県の「笠間焼」の器を使用します。作家ものの唯一無二の器は、それぞれが個性的。準決勝に進んだ高校生バトラーたちも、はじめて見る器です。

 

準決勝第1ラウンドは、茨城県⽴⼩瀬⾼等学校「カメリア」と茨城県⽴⽯岡第⼆⾼等学校「カモノハシ⾷べたい」。「そんな重そうなものを、貴重な器にいけて大丈夫?」という会場の不安をよそに、大きな流木に大胆に挑戦します。

準決勝第2ラウンドは茨城県⽴取⼿第⼆⾼等学校「瑞花」と、茨城県⽴⼟浦第⼀⾼等学校「遍地開花」。貴重な作家ものの器にワクワクしながら思いっきり花いけを楽しむ様子に、見ているこちらも思わず笑顔になります。

のこぎりを引く音、ハンマーで叩く音、ワイルドな音と丁寧な仕事が会場を沸かせます。力強さと繊細さが融合し、見事なバランスで作品が仕上がる様子に、拍手が起こりました。

緊張感に包まれた準決勝を制し、決勝に進んだのは茨城県⽴⼩瀬⾼等学校「カメリア」と茨城県⽴取⼿第⼆⾼等学校「瑞花」。決勝ではそれぞれがいける器を選びますが、両チームとも個性の強い器を。一筋縄ではいかない難しい器に挑戦することで、自分の限界に挑みます。

決勝戦だけあって、実力者同士の安定感のある戦いに。野生的な枝ものに選び抜かれた色の花々。片方は空間全体を使ってダイナミックに、もう片方は繊細な色合わせでコンパクトにまとめて。同じ時間、同じ会場でつくられたまったく違う作品に、ジャッジメントも真剣勝負。その器や花のように、強烈な個性が輝きます。

優勝は、茨城県⽴⼩瀬⾼等学校「カメリア」。男子チームです。予選ではうまくいかなくて悔し涙を流した二人でしたが、見事に優勝を勝ち取りました。「いい場所に、いい花を、いいバランスでいける。そのセンスがすばらしい」と、審査員から評されました。

惜しくも準優勝となった茨城県⽴取⼿第⼆⾼等学校「瑞花」のふたり。思いっきり楽しんで実力を出し切ったからこそ、やり遂げた満足感に満ちあふれていました。

最多31チーム、そして5時間に及ぶ長丁場となった茨城大会。今回のバトルでは流木が勝敗の決め手になりました。見て、触って、持ち上げて重さとバランスを感じ、そして作品にどう生かすか考える。イメージをつくり実現する。目の前の花材、花器を見て、それぞれの個性を生かし、花をいけることを楽しむ姿が印象的でした。今日参加してくれた高校生バトラーが、この見事な花材に恵まれた茨城でこれからも花いけを続けてくれることを期待しています。参加してくださった皆さん、観客のみなさん、ありがとうございました!