花いけだより

大会レポート✴︎北海道大会2023

2023年11月3日(金)サッポロさとらんど さとらんど 交流館にて「全国高校生花いけバトル 北海道大会2023」が開催されました。秋から冬へと移り変わる真っ最中の札幌。文化の日にふさわしい、まっすぐで個性あふれる作品がたくさん誕生し、新しい文化を築き上げました。

参加したのは8校19チーム。インフルエンザの流行で残念ながら欠席もありましたが、それぞれが大会への思いを胸に、札幌に集まりました。また、会場には今までにない数の観客の皆様が投票に参加し、高校生バトラーたちの勇姿を最後まで見届けてくれました。

ガラス張りの前回とは異なり、今年は背景が白壁になったことで、お花の色や形がはっきりとわかり、作品の魅力がより伝わってきたように思います。

北海道大会では「高校生花いけバトル」ではおなじみの竹はありませんでしたが、代わりに北海道の白樺が登場。他にも、珍しい花や枝物を含む色とりどりの花材が会場を取り囲みました。審査員の生花作家・伊藤庭花さんからは「花の色を意識し、隣にくる色を考えて花を見つめてほしい」とのアドバイスが送られました。

予選1回戦から珍しい花が続々と登場します。赤い枝のサンゴミズキに、南アフリカの国花・キングプロテア、ほうきの原料になる赤くふわふわしたコキアなど、個性的な花をチョイスする高校生バトラーたち。冒頭のアドバイス通り、色をいかし、花の表情をよく見ていけている姿が印象的でした。

「緊張して頭が真っ白になった」「自分にできるか不安だった」という言葉が飛び交いながらも、その表情にやり遂げた自信と喜びが感じられた予選大会。観客の応援も刺激になり、普段は味わうことのない緊張感の中で、充実した5分間を過ごせたことと思います。

北海道の紅葉を表現するように、赤や黄色の木々を積極的に取り入れたチームも。五感で季節の変化を感じながら、作品として昇華する姿に、自然を感じ、花をいけることの素晴らしさを感じました。器の中に再現すれば、紅葉を見ていない人にも届けることができる。そんな想いが伝わってくるようでした。

予選4ラウンドは、いずれも全国大会や選抜大会出場経験のある強豪校同士の戦いに。流木やしゃれ木が印象的だった3作品。自然の形を生かしながら各々の個性を加え、三者三様の作品ができあがったとき、人間の生み出す作品の奥深さに触れた気がします。いずれのチームも先鋒が早いペースで進め、次鋒が彩りを添えていくことで、ボリュームのある作品に仕上がっていきました。

どのチームも勢いがあり、積極的に生けようという気概を感じた北海道大会。元気が出るような色とりどりの作品が縦に横に伸びる姿は堂々としていて、自信にあふれていたように感じます。前回からの北海道大会の成長を感じさせるように、高校生バトラーたちの力強い花いけが会場を華やかに彩ってくれました。

審査員のドクトル薄木さんからは「3年間で一番レベルが高かった」との評価も。今回の北海道大会では、バトル後に冗談が飛び交い、笑いにあふれた和やかな雰囲気がみられました。大らかでのびのびとした作品の数々に、花をいけることの楽しさや、表現したいことがある人たちのまっすぐな気持ちを感じることができたように思います。

予選に続く準決勝は、個人戦となります。1人で1作品を仕上げますが、隣のチームメイトと連動性を持たせたり、共通の花材を使ったりと趣向を凝らします。

初戦の北海道札幌国際情報高等学校「霞草」は、2つの花器を流木でつないだり、大きなモンステラや、沖縄から届いたオーガスタを使うなど、ダイナミックに。直接的なつながりはなくとも、花材のトーンが合った世界観のある仕上がりとなりました。

対する市立札幌旭丘高等学校「みどり」は、青いデルフィニウムを共通で用い、繊細で美しい作品に仕上げました。

準決勝2戦目の北海道北広島⻄高等学校「チームでいご」は、秋に赤く染まるコキアや、2人で共通で取り入れた木苺を生かして、流木の茶色だけでなく、紅葉のような美しいグラデーションを立ち上がらせました。次鋒の瀬川さんは終始丁寧にいけすすめ、好きな花でしっとりとシックにまとめあげます。

唯一、沖縄から参戦した沖縄県立読谷高等学校「Keep shining」は、姉弟チーム。初参加の先鋒・柳さんは、枝物をダイナミックにいけた自分らしい作品を。次鋒のお姉さんはボリュームのある華やかな作品を作り上げてきましたが、残り30秒あまりのところで器が倒れてしまい、立て直しができずに無惨にも時間終了。

「あきらめないといけないけど、あきらめられず、いつも失敗しちゃう自分。そこも自分らしいなと思った」というコメントをくれた柳さん。悔しさを飲み込みながら、冷静に自分自身を分析し、気丈に振る舞う姿に、彼女らしい強さを感じました。うまくいかないことがあっても、挑戦しないと高みには到達できない。そのことを知っているからこそ、何度失敗しても立ち上がれるのでしょう。いつかこの挑戦が実った時も、変わらずまた高い壁を登っていくのだろうと感じる、素晴らしい5分間でした。最後まで挑戦を辞めずに戦い続けた姿に、気づけば会場はこの日一番大きな拍手で包まれていました。

決勝戦は「霞草」と「チームでいご」の対決に。いけたい花をいけたいように、好きな花材で自分らしく。そんな司会者の言葉通りに、表現することの楽しさが伝わってくる時間となりました。わずか5分間ですが、そこにはさまざまな思いが詰まっています。今回の北海道大会はとくに「花をいけたい」と思う気持ちが伝わってくる作品をたくさん見られたように思います。

 

優勝した「霞草」の二人。初めて大会に挑戦した松下さんと、2度目の全国大会進出をかけて臨んだ山口さん。花のないところにも空間を感じる、情緒と奥行きのある作品で会場を魅了しました。

準優勝は、今年から華道を始めた小田切さんと瀨川さんの「チームでいご」。「始めたばかりでここまで来られたのはすごいこと」「来年はもっといけると思う」と前向きな姿を見せてくれました。

 

「昨年からの進歩が目覚ましい」と審査員も絶賛だった北海道大会。まだまだここから伸びていきそうな、内に秘めたパワーを感じる大会となりました。今年参加してくれた高校生バトラーのみなさん、来年も楽しみにしています!