花いけだより

大会レポート✴︎近畿大会2023

2023年11月12日(日)、「全国高校生花いけバトル 近畿大会」が開催されました。ららぽーと門真・三井アウトレットパーク 大阪門真に集まったのは、16校30チームの高校生バトラーたちです。ドラマ続きの地区大会もあと少し。近畿大会でも白熱の花いけが繰り広げられました!

会場はショッピングモールの中にある吹き抜けの広場。ステージ脇には秋らしく色づいた見事な枝ものや花々が並び、さながらお花屋さんのような華やかさです。買い物客が思わず足を止め、2階、3階の柵越しに覗き込む人の姿も。普段の練習では味わえない賑わいの中、高校生バトラーは5分間の花いけに挑みます。

30チームが参加した今大会の予選ラウンドは全10ラウンドにおよぶ長期戦に。大会冒頭で審査員の伊藤庭花さんが語った「主役となる花材を引き立てて」という言葉に応えるように、真剣な眼差しで花材を見つめる高校生バトラーたち。「この花を使いたい!」「この枝の迫力を見せるには?」。ときには絵に描きおこしながらイメージを膨らませます。

同じ花材を主役に据えた作品が生まれることもありますが、どれひとつとして同じものはありません。同時に花をいける3チームがすべて、オレンジが鮮やかな大輪のガーベラを登場させたラウンドもありました。

 

しかし終わってみれば、見事に三者三様。流木やパンパスグラスを背景にし、オレンジを際立たせたチーム。横たえた竹とスッと縦に立たせたドラセナの中心に花を据え、見どころを強調したチーム。主役となるガーベラの本数を絞ることで、儚さと美しさを演出したチーム。明確なイメージと意志、そして何よりも「自分たちらしい花いけがしたい!」という気持ちがひしひしと伝わってくるような個性豊かな作品たちでした。

花いけバトルでは、作品の出来栄えだけでなく作品を作るプロセスも同様に大切にしています。予選ラウンドでも、5分間の展開づくりに果敢に挑戦してくれたチームがありました。順調にいけ進め、完成かと思われた残り15秒。突然大きな竹を登場させ、横一文字に仕掛けたのです。あっと驚くような展開も、高校生バトラーは「狙っていました」とはにかんで笑いながらコメントしてくれました。

ときにはスポーツのようなシビアな競技性が見られる花いけバトル。その中でも、見ている人を楽しませたいという気持ち、そして自分が楽しみたいと思う気持ちの大切さを教えてもらったような気がします。ひたむきさと勇気、そして遊び心にあふれたパフォーマンスを見せてくれた高校生バトラーに拍手を送りたいと思います。

準決勝は、接戦の予選ラウンドを勝ち抜いた4チームによる個人戦。安定させるのが難しく個性的な形の花器が用意され、より自由な想像力と独創的なひらめきが試されるラウンドとなりました。

準決勝第1ラウンドから、個性をぶつけ合う激しい展開に。予選1位通過の相愛高等学校「相愛 楓葉」が竹で空間につながりを生み出しダイナミックな作品に仕上げれば、予選4位通過の京都産業大学附属高等学校「華匠」は繊細で端正な表情の作品で勝負に出ました。

「華匠」をはじめ、2023年シーズンの「高校生花いけバトル」では男子チームの躍進が目立ちます。流派や経験、そして男女に関わらずすべての人に花をいけることの喜びや楽しさを知ってもらえることを嬉しく思います。

準決勝第2ラウンドでは、それぞれのバトラーが慎重さと大胆さを存分に発揮してくれました。試合開始のゴングが鳴ってから2分もの間花をいけずに器の配置にこだわったバトラーや、金色の枝が最も美しい姿をみせる向きを丁寧に探し出したバトラー。それぞれが花に向き合い、いけきった5分間でした。

迎えた決勝戦は、相愛高等学校「相愛 楓葉」と神戸龍谷高等学校「もみじ」の戦いに。決勝戦では使う花器を自分で選ぶことができます。しかし今回は使いたい器が重なったため、ジャンケンの末に「相愛 楓葉」が勝ち取ることに。「もみじ」はイメージしてきた構成を一度まっさらに戻さなければなりません。即座に切り替え、花いけバトルが始まれば無我夢中で花をいける。ひたむきな表情から、この花舞台にかける気持ちの強さが伝わってくるようでした。

「相愛 楓葉」の8点リードで迎えた運命の次鋒戦。「相愛 楓葉」の上田さんがマキの枝もので空間の広がりを演出すれば、「もみじ」の武藤さんはアレカヤシの葉をふわりといけて空間の奥行きを演出する。両者とも一歩も引かない、白熱の花いけでした。

優勝した相愛高等学校「相愛 楓葉」の松田さんと上田さん。大会2連覇おめでとうございます!練習に裏付けられた確かな技術と、それに留まらないチャレンジ精神が魅力的でした。全国大会でもふたりの花いけを楽しみにしています。

惜しくも準優勝となった神戸龍谷高等学校「もみじ」のふたり。結果発表後の晴れやかな笑顔が印象的でした。真剣に花をいけた5分間を誇りに思って、これからも花に親しんでください。

近畿大会にはどのバトルにもドラマがありました。それは高校生バトラーがこのステージで、思い切りよく挑戦したからこそ。また、今大会では「カンガルーポーを使えたらよかった」「主役となる花の向きが決まらなかった」など振り返りのコメントが具体的であったことも印象的でした。目標を見据えてまっすぐに挑み、うまくいかなかったところをきちんと見つめる。そんな姿勢は、これからの人生でもきっと皆さんを支えてくれることと思います。

 

来年また成長した皆さんの姿が見られることを楽しみにしています。心震えるバトルをありがとうございました!