大会レポート:東北大会2024
2024.11.12
2024年9月21日(土)、宮城県宮城郡利府町にあるイオンモール新利府 南館にて、「全国高校生花いけバトル 東北大会」が開催されました。高校生たちが即興で花をいける5分間。会場となったショッピングモールでは、買い物客が思わず足を止め、高校生たちの活躍を見守っていました。多くの観客がジャッジに参加してくれた東北大会の様子をお届けします。
ステージ横には、宮城県名取市のバラやケイトウ、白石市の菊など、植物に恵まれた宮城県ならではの充実した花材が並びます。他にも、山採りの松やドウダンツツジ、ユーカリ、マンサク、ノバラ、ツルウメモドキなど、地元の市場と多くの生産者の方のおかげで、立派な枝物に恵まれた大会となりました。
予選はチーム戦。5分間の中で先鋒、次鋒が交代し、2人で協力してひとつの作品を作り上げます。審査員の伊藤庭花さんからは「チームワークを大切に、2人で色や花をよく相談し、他のチームの作品もじっくり見て学んでほしい」とエールがおくられました。
審査員に加えて、会場にいる観客の方々にもジャッジに参加していただきました。「いい作品だった」「がんばっていた」など、心が動いたチームの色札を掲げて、直感で投票してもらいます。
「技術や経験はまだ未熟かもしれない。それでも、情熱とあきらめない気持ちがあれば、心を動かす花いけができる」、そんなことを感じさせてくれるような、想いのこもった会場票が審査を動かしていきます。
力強く思い切りの良いパフォーマンスで、一気に松の枝を立たせたチーム。30秒で手際よく竹に花をいけていくチーム。事前に思い描いた通りに、作品を完成させていきます。上階からも観客が見下ろす中、大勢の前で花をいける経験は「全国高校生花いけバトル」ならでは。いつもとは違う緊張感の中でも、いけたい花を思い切りいける姿が頼もしく、目の前で変化していく5分間に魅了されます。
大会に挑戦すること、ステージ上で新しいことに挑み続けること。その一つひとつが高校生たちを成長させてくれます。「やろう」という気持ちは何物にも変えがたいもの。「不安が大きかったけど、『私は絶対できる』と思ってステージに立った」という言葉に、見ている側も勇気をもらいました。
今回の東北大会では、はじめて花いけに取り組む人もたくさんエントリーしてくれました。経験値は足りなくても、何度も練習を繰り返し、今日のために準備を重ねてきた姿は見る人の心を動かします。冷静に、思い描いたイメージを形にしていく人。思い切りよく、即興でいけていく人。戦い方はそれぞれですが、「このステージですべてを出し切るんだ」という気持ちは同じ。普段はできないようなダイナミックな作品に挑戦できる喜びに満ちていました。
決勝トーナメントは、先鋒・次鋒の個人作品で戦います。2作品が横に並ぶので、2つの連動性や、横並びならではの見せ方にも個性が光ります。
予選1位の山形県立小国高等学校「風鈴」は、パンパスグラスやコスモスなど、秋らしい花材を盛り込みます。普段、生け花をやっているわけではないという2人。日々一緒に寮生活をする中で色々な話をしながらチームワークを深めてきました。
対する、予選4位の宮城県石巻北高等学校「筋肉相撲飯」は、オレンジの実がなったツルウメモドキで秋らしさを加えて。前と後ろのバランスを見ながら、手際よくいけていきます。
予選2位通過の常盤木学園高等学校「陽奏」は、カナリアナスを2本使ってバランスを取ります。まるで龍のような、躍動感のある美しい作品が完成しました。
対する予選3位の東海大学山形高等学校「アルストロメリア」は、2人で同じユリを使い、作品に共通性を持たせます。今回、初めてひとりで花をいけたという五十嵐さん。好きな花材をたっぷり使い、このステージで大きな一歩を踏み出してくれました。
決勝戦は山形県立小国高等学校「風鈴」対、常盤木学園高等学校「陽奏」。「花をいけたい」という強い気持ちが感じられる、前向きで勢いのある5分間となりました。
先鋒戦で空間を意識した美しい作品に仕上げたのは、「陽奏」。大きなアセビの枝をいけ、少し離れて冷静にバランスを確認する姿が印象的でした。
対する「風鈴」は、終始笑顔で、自分達の思い描いたイメージを着実に形にしていきます。難しいマンサクの枝に挑戦し、華やかに花を咲かせました。
1点差で迎えた次鋒戦。「陽奏」は、何度も竹を立たせようとするも持ち上がらず、途中で作戦を変更して横に渡します。ところが、竹が回転してしまい、そちらも失敗に。あきらめず冷静にドウダンツツジの枝を持ってきて配置し、最後に再び竹を配置して左右の作品をつなげていました。
当初やりたい形とは違ったかもしれない。それでもあきらめず、負けない気持ちを持って自分が今できることを精一杯やり尽くした。その姿勢が何より花いけバトルらしい姿だったと思います。最後までこだわって戦い抜いた姿は、自分の糧になっただけでなく、同じステージに立った仲間たちにもいい刺激をもたらしてくれたはずです。
優勝した常盤木学園高等学校「陽奏」の2人。同校は2年ぶりの地区大会優勝となりました。最後は竹が立たずに悔しい思いをしましたが、何度も立てようと努力する姿、用意された花を存分に生かし、自分らしさを加えていく姿は見事でした。
準優勝の山形県立小国高等学校「風鈴」。終始笑顔で、チームワークよく戦った2人。最後まで明るく楽しく、自分たちの花いけで会場を魅了していました。
初参加の学校が多数挑戦してくれた東北大会。「花をいけたい」という気持ちがあれば、誰でもステージで輝けるのだということを証明してくれた大会だったと思います。失敗を恐れずダイナミックに、高校生らしい清々しさで、作品を完成させていく高校生バトラーたち。来年もまた、そんな姿を東北で見られることを楽しみにしています。