花いけだより

大会レポート✴︎広島大会2023

2023年7月23日(日)、「全国高校生花いけバトル 広島大会2023」が行われました。広島県・広島市のアルパーク 時計の広場に12校31チームの高校生バトラーが集まり、夏真っ盛りの広島で白熱の花いけを見せてくれました。

昨年を大きく超える人数の高校生バトラーが集まった今大会。3チームが同時に花をいける予選ラウンドは全11回戦、およそ3時間にも及びました。審査員のいけばな作家・伊藤庭花さんが冒頭で語った「他のチームをよく見て、自分たちの花いけに生かしてください」との言葉に応え、真剣なまなざしで花いけバトルを見つめる高校生バトラーの姿が印象的でした。

予選ラウンド1回戦から、客席からどよめきと歓声が起こるドラマチックな展開に。高さ3メートルに及ぶ竹を垂直に立てようと奮闘したのです。危うく器をかすめるほどによろめきながら、最後には竹がまっすぐに立ち、止まりました。天窓から差し込む太陽の光に照らされたその竹は、高校生バトラーのチャレンジ精神とあきらめない気持ち、そして熱意を象徴するかのように輝いていました。

「他のチームが使っている花材を使ってみたくて、急遽構成を変えた」というチームもあったように、高校生バトラーたちが互いに影響し合い「花をいけたい!」という気持ちをぶつけ合った予選ラウンド。ラウンドを重ねるごとに会場のボルテージが上がっていきます。

今大会では、地元・広島県産のモミジの枝とともに、生産者や地域の花屋の方々が届けてくださった色とりどりのリンドウやマム、バラが多く登場しました。先鋒が作り上げた土台を引き継ぎ、次鋒が色をつけていく。新しい花を挿しいれる度に表情を大きく変える作品から、ひとときも目が離せません。

夏らしい爽やかなブルーのリンドウの隣に、反対色のイエローのヒマワリを添え、色を引き立てあう花合わせをしたチーム。儚げで美しい、薄いトーンの色の花で作品を構成したチーム。普段の練習では用意できないほどの多くの種類の花材を前にしても、目いっぱいの想像力で積極的にいけきりました。

「もっとたくさん花を入れたかった」「枝の向きがそろっていないのが心残り」。花いけバトルを終え、悔しさをにじませる言葉が多く聞かれた今大会。それも、自分が思い描いたイメージが確かにあったから。「もっとできる!」という自信と向上心は、きっと高校生バトラーを大きく成長させてくれるはずです。

準決勝は、予選を勝ち抜いた4チームによる個人戦。1人でひとつの作品を生けきらなければならない準決勝は、波乱の展開となりました。

 

竹に食い込んだ器具が外れず、泣く泣く竹をあきらめて作品を仕上げたチームも。奇しくもそれは、予選1回戦で象徴的な竹を立て、圧倒的な点数で予選を通過したチームでした。

惜しくも敗れてしまいましたが、ギリギリまでチャレンジする姿勢には「高校生花いけバトル」が大切にしているものが詰まっています。作品の完成度を評価する「作品点」では劣りましたが、花をいける熱意を評価する「表現点」では相手チームを上回りました。

決勝戦は昨年の優勝校・広島県立福山誠之館高等学校の「ななみづき」と、広島工業大学高等学校「カメリア」のカードに。先鋒戦は1年生対決になりました。両バトラーとも、初出場とは思えないほどスケールが大きく、ダイナミックな作品を仕上げました。のびのびといけきった先鋒戦の結果は、「カメリア」がわずかに4点のリード。観客による投票も全くの同数と、接戦のうちに終わり、勝負の行方は次鋒戦に託されました。

竹で涙を流した同校のチームの雪辱を果たすかのように、あえて竹わりに挑んだ「カメリア」と、1年生らしい溌剌としたエナジーを作品に詰め込んでボリュームたっぷりに仕上げた「ななみづき」。両チームとも一歩もゆずらない白熱の決勝戦でした。

優勝は「カメリア」。初出場ながら堂々とした花いけを見せてくれた六郎さんと、丁寧な所作と熱い挑戦心を見せてくれた太尾田さん。先輩・後輩ペアならではの信頼感あふれるチームプレーが見事でした。全国大会でのパフォーマンスを楽しみにしています!

準優勝は1年生ペア「ななみづき」。登場シーンもインタビューも、花をいけている時も、終始弾けるような笑顔が印象的でした。「楽しかったです!」と清々しく言ってくれた井村さんと、「いっぱい練習して来年はリベンジします」という三好さん。これが始まりです。また、この花舞台でお待ちしています!

今年で7回目の開催となった広島大会。作品のレベルも、会場の熱も年を重ねるごとに大きくなっているように感じます。常連校では先輩から後輩へとバトンがつながり、初出場の高校生バトラーもそれぞれの思いを持ち帰り、次を見すえて練習に励む。確かな積み重ねの先に、高校生バトラーの成長があります。日本の花文化を背負い、共に創り上げてくれることを、嬉しく誇りに思っています。

 

また来年、ひとまわり成長した姿が見られることを楽しみにしています!