花いけだより

【大会レポート✴︎全国⾼校⽣花いけバトル東北⼤会2022:決勝トーナメント編】

予選に続き、上位4チームによる決勝ラウンドが行われました。審査員のフラワーデザイナー・堀江志穂さんからは「花は生きものなので、一つひとつ姿かたちも重さも違う。決勝ラウンドでは花それぞれを見極めていけてほしい」と、エールが送られました。

準決勝第1ラウンドは、予選1位の「ナスタチウム」と予選4位の「ハルシャギク」。同じ常盤木学園高等学校同士のバトルです。それぞれの個人作品の合計ポイントで競う準決勝。色で統一感を見せた「ナスタチウム」に対し、2人の作品を枝もので連結させた「ハルシャギク」と、両者まったく違う構成で、リズミカルな花いけを見せてくれました。

準決勝第2ラウンドは、予選2位の「桃」と、予選3位の「ひな」。石巻北高等学校「桃」は、赤い花器に竹と地元石巻産のガーベラを大胆に。対する柴田農林高等学校「ひな」は、流木で斜めに固定した花器に、デルフィニウムを表情豊かに。勢いだけではない工夫があり、「表現したい」という強い意思が感じられた両チーム。個性的な花に想いを込めて、作品に昇華しました。シンプルでありながら、構成のおもしろさ、表情の豊かさが見えたこのバトルは、わずか1ポイント差で「桃」の勝利となりました。

決勝は、常盤木学園高等学校「ナスタチウム」対、石巻北高等学校「桃」。先鋒戦では、両チームとも1分半かけてじっくり花材を集め、作品に取り掛かります。今春の選抜大会にも出場した「桃」は3年生。最後の「高校生花いけバトル」です。大きな器に斜めに立てかけた竹に、白を中心にした地元産の花を華やかに飾りました。

先鋒戦では「桃」が10ポイントをリード。しかし、高校生花いけバトルでは10ポイント以上の逆転劇がこれまでに何度もありました。次鋒戦では「ナスタチウム」が白いミツマタの枝を器の上に横たえ、黄色いメラレウカ、淡いオレンジのユリをいけ、赤いダリアでアクセントを。一方、器に竹を横たえ、石巻産の花材をふんだんに使った「桃」。両チームとも、決勝らしい華やかでダイナミックな作品を見せてくれました。

 

どちらも実力を出し切り、ハイレベルな決勝戦となりましたが、最後は鮮やかな黄色でまとめた「ナスタチウム」が逆転。先鋒・次鋒の合計ポイントでも逆転し、優勝に輝きました。

「練習の時よりうまくできた」という、優勝した常盤木学園高等学校「ナスタチウム」のふたり。仕草までピッタリの1年生コンビです。

「あと少しだった」と涙を流した、石巻北高等学校「桃」のふたり。地元産の花にこだわり、最後まで攻めに攻めた、アグレッシブな花いけでした。後輩たちに全国大会出場の夢を託します。

 

東北大会は「切磋琢磨」という言葉が似合う、見ごたえ充分の熱いバトルでした。審査員のひとり、華道家の伊藤庭花さんからは、「東北大会では、どのチームもうまくできなかったところを反省しているのが良かった」とお話がありました。負けて悔しかった思い、うまくできなくて悔しかった思い。失敗から学び、練習して次につなげ、前よりもいいものを目指すこと。その繰り返しが、素晴らしい花いけにつながっていくのだと思います。花と真摯に向き合い、全力を出し切った「全国高校生花いけバトル」での経験は、これからの人生でもきっと役に立つはずです!