花いけだより

大会レポート✴︎関東大会2023

2023年6月18日(日)、東京・池袋にあるサンシャインシティ 噴水広場にて、「全国高校生花いけバトル 関東大会2023」が行われました。

2023年地区大会の開幕となったこの日は、過去最多の13校29チームが出場。今回は4年ぶりに会場の皆さまも審査に参加してもらい、活気あふれる4時間となりました。

予選ラウンドは3チームごとの全10回戦。5分間のうちにチーム2人が交代し、1つの作品を作り上げます。毎年出場している常連校のバトラーから、お花を始めて3ヶ月という1年生まで、皆が同じ条件でたった5分間を戦い抜く「全国高校生花いけバトル」。技術や経験ももちろん大切ですが、それ以上に、どれだけ自分らしく取り組めたか。楽しくいけられていたか。そんな、お花への想いや向き合い方も評価の対象になります。

「思い描いていた作品ができた」「練習の成果を出せた」といった言葉を聞くたびに、審査員の平間磨理夫さんがお話しされていた「いいところだけを評価しているので、自分のやることをブレることなくやりきってほしい」という言葉が思い出されます。一人ひとりが自分の持っている力を出し切り、個性を発揮して思いっきり表現することの楽しさが、客席まで伝わってくるようでした。

やりたい表現を全力でやり切ること、最後まであきらめないこと、走り切ること。そんなバトラーたちの熱意と思いが見ている人たちの心を動かし、ときには技術や経験を超えていくことも。思いがあれば、誰もが平等に戦うことができるステージに、胸が熱くなります。

予選最終回では、残り15秒で竹を立て始めるチームも。そんな無謀とも思える挑戦に、会場からはこの日1番のどよめきが起こりました。失敗すれば、すべてが崩れてしまうかもしれない状況。終了のゴングが鳴った瞬間、スッと上に伸びた竹を見て、会場は大きな拍手に包まれました。

あきらめなければ奇跡は起こる。そんなことを目の前で証明してくれた予選最終戦。「先鋒の土台を信じていたから、絶対にできると思った」という次鋒の言葉に、「チームメイトを信じる」という、この大会にとって一番大切なことを学んだ気がします。

準決勝は、予選を勝ち抜いた4チームによる個人戦。予選よりさらにハプニング続きとなりましたが、「この5分間で攻めてやる」「チャレンジしてやる」という強い意志が垣間見えました。

器を倒して30点の減点となってしまったチームも。悔し涙をこらえる様子に、会場からは大きな拍手のエールが送られました。うまくいかなくて悔しい思いをしたこと、実力を出し切れなかったこと、それも1つの経験。この日の思いを胸に、次はきっと、ひと回り成長した姿に会えると信じています。

決勝戦は、同じ正則学園高等学校の2チームの戦いに。「TWINS」は、10秒前から最後の花を生け始めました。ギリギリまでチャレンジする姿勢を崩さない高校生バトラーたち。落ち着いて、頭に描いたイメージを形にしていきます。

対する「M&D」は、洒落木の間に器を埋め込み、独創的な形を作り上げていきます。完成形をイメージしながら、落ち着いて丁寧に着実に。しかし、花を取る動作は早く。そんな緩急のつけ方に、ここまで上り詰めてきたチームの余裕と精神性の高さを感じました。

18ポイント差で始まった次鋒戦は、スタートからこれまでにない勢いがあり、決勝戦への決意とそれぞれの思いが伝わってきます。「強い気持ちでいけてほしい」という司会者からの言葉に、会場からは拍手のエールが送られました。

優勝は「TWINS」。「ものすごく嬉しくて、表現する言葉が浮かばない」と語る土方さんと、「自分らしい花いけを貫いた。ここまで練習してきたことが報われて嬉しい」と語る下川さん。ときに繊細に、ときにダイナミックに、パワフルな花いけを見せてくれました。

準優勝は「M&D」。1年生から毎年挑戦し続け、さらに上を目指す気持ちを忘れずに、毎年さらに進化した姿を見せてくれた太田さん。3年間おつかれさまでした!下田さんは「最後は自分がいけたいと思う作品ができてよかった」と笑顔で語ってくれました。

「全国高校生花いけバトル」は、作り上げるまでの過程を一緒に楽しみ、その後はあっという間に片付けられてしまう、まさに幻のような時間です。表彰式で語られた「儚くも美しい瞬間を作り出し、私たちの心を震わせました」という言葉をまっすぐに噛み締める、夢のような大会となりました。

緊張感ただよう空気のなか、最後まで自分らしい花いけを追求し続けた高校生たち。今回は観客の皆さまがステージを見守る目がいつも以上に真剣で、いつも以上に温かく感じられました。多くの方の応援のおかげで、高校生たちはまたひとつ、大きくなれたと思います。

 

「全国高校生花いけバトル2023」地区大会は、全国11ヶ所で開催されます。今後の地区大会もどうぞお楽しみに!