大会レポート✴︎ 栗林公園杯 2022:予選ラウンド編
2023.2.07
2023年1月22日(日)、「第六回 全国高校生花いけバトル 栗林公園杯2022 全国大会」が行われました。会場となった香川県高松市には、全国各地から13チーム26名の高校生花いけバトラーたちが集結。ステージには、全国の生産者から届いた色とりどりの花々が並び、3年ぶりに有観客での開催となった「レグザムホール」を華やかに彩りました。
この日集ったのは、2022年に13ヶ所で行われた地区大会で優勝を果たした高校生たち。全国大会に向けて練習を重ね、他チームの動画を見ては作戦を練り、自分たちらしい花いけを見出そうと、技術や感性を磨いてきました。
地区大会よりさらにパワーアップし、自信に満ちた姿でステージに立つ26名。大会では、持ち味を生かして情熱に満ちた戦いを見せてくれました。
予選ラウンドは個人戦。先鋒、次鋒がそれぞれ5分間でひとつの作品を作り上げ、合計得点で競い合います。さすがは、地区大会を勝ち抜いてきた精鋭チームたち。完成後のイメージを思い浮かべながら、落ち着いてテンポ良く作品を仕上げていきます。狙っていた花材が他チームに取られてしまうなどハプニングはありながらも、「焦らずに落ち着いて」と自分に言い聞かせるように深呼吸をする姿が印象的でした。
大きなステージでの経験を重ねることで少しずつ大会での立ち居振る舞いに慣れ、気持ちをコントロールできるようになってきた高校生バトラーたち。そんな小さな成長の一つひとつが頼もしく感じられます。
今大会では、全国各地から生産者の方々が自慢の花や枝ものを提供してくださいました。なかでも会場となった香川県産のロウバイは、多くのチームが取り合うほど。地元の香川県立飯山高等学校「飯山 花笑み」は、真っ赤なダリアや黄色のオンシジウムと組み合わせて、生命力にあふれた力強い作品で会場を魅了しました。
第一学院高等学校 新潟キャンパス「第一チルドレン」は地元・新潟から届いた黄色のチューリップを選択。ブルーのグラデーションを効果的に用いて、会場となった香川県の瀬戸内海をイメージした雄大な作品で挑みます。それぞれに、表現したいことをイメージして望んだ本大会。花の力を借りて自由に世界を表現する姿勢に、花の持つ可能性をあらためて感じました。
茨城県・奥久慈産のサクラも多くのシーンで登場しました。器の中で満開のサクラが咲くと、空間がパッと明るくなり、急に春が訪れたかのよう。生産者の方がこの日のために開花のタイミングを調整し、一番きれいな状態で本番を迎えられるように育ててくださいました。
同じサクラでも、チームによって雰囲気はさまざま。シルバーのアスパラガスと合わせてダイナミックに仕上げた高知学芸高等学校「はるまき」の作品が印象的でした。
ボケの枝を2本組み合わせることで、ダイナミックで奥行きのある空間を作り上げたのは、福岡県立修猷館高等学校「絢爛」。丁寧に、枝の表情をよく観察しながらいける姿が印象的でした。伸びやかな花と、口元のキュッと引き締まった茂みと花。そんなコントラストの強さが魅力的です。
続く予選第2ラウンドは、先鋒、次鋒の2人で1つの作品を作り上げるチーム戦です。
審査員の滝謙一さんからは「さすがは全国大会。きれいなだけでなく、ストーリーや思いが感じられ、見ている人にも伝わってきます」と称賛し、「第2ラウンドでは、足すだけでなく、引き算で枝の良さを引き出すことも大切にしてほしい」とアドバイスを送りました。
修学旅行で見た竹林の美しさを表現したのは、北海道札幌国際情報高等学校「SIT」。対する熊本県立熊本工業高等学校「優美淡」は、ロウバイとヤナギの枝に神聖さを感じ、ステージ上に神殿を作ろうと挑みました。いつも囲まれていたという熊本県産のかすみ草をふんだんに使い、繊細さとスケール感の融合したダイナミックな作品を見せてくれました。
「予定していた花材を確保できずあたふたしてしまった」という、沖縄県立首里高等学校「ネコヤナギ」のふたり。最初は慌てながらも、身体が動くままにひたむきにいけることで「最後は思っていた以上にいいものができた」と語ってくれました。対するは、3年目で最後の挑戦となる「ティンカーベル」の土橋さん。丁寧に花と向き合い、ビワの美しい枝の動きを生かしながら伸びやかに仕上げました。
茨城県立小瀬高等学校「勿忘草」は、3年間の集大成となる今大会で地元・奥久慈の桜を使い、3年間お世話になった方たちに感謝の気持ちを伝えました。
「思いが感じられる花いけ」という言葉の意味をあらためて実感できたような、気持ちのこもった5分間のプレゼンテーション。言葉はなくとも、大きなステージで全身全霊をかけて伝えたメッセージに心揺さぶられました。
自分ひとりではなく、チームのメンバーや先生、友人、応援してくださる生産者の方々の思いを背負ってこのステージに立っている。そんな意志と強い思いはきっと、「全国高校生花いけバトル」を見ている多くの人に届いていたと思います。
愛媛県のサクラヒメ、白梅にボケの枝と、春を感じる枝物がたくさん出揃った予選ラウンド。小さなハプニングはありながらも、各チームが励まし合いながら落ち着いて乗り越え、1つひとつ丁寧に作り上げていきました。対戦チームに惑わされず、自分たちらしさを貫く姿勢は、全国大会ならでは。信じる道を進むという、表現にとって大切なことを教えてもらいました。
全力で走り、頭を働かせ、手を動かし、最後は自分たちを信じて感じるままに完成に向かう13チーム。落ち着きの中にも内なる情熱が感じられる、濃密な時間となりました。
大接戦の末に予選ラウンドを通過したのは、次の6チームとなりました。おめでとうございます!
1、香川県立飯山高等学校「飯山 花笑み」(967pt)
2、広島県立福山誠之館高等学校「ティンカーベル」(964pt)
3、高知学芸高等学校「はるまき」(947pt)
4、福岡県立修猷館高等学校「絢爛」(943pt)
5、相愛高等学校「相愛 楓葉」(941pt)
6、東京都立小石川中等教育学校「ひともし」(937pt)