花いけだより

大会レポート✴︎第七回全国大会・決勝ラウンド

2023年2月4日(日)に行われた「第七回 全国高校生花いけバトル 全国大会」。予選ラウンドに続いて、以下の6チームによる決勝ラウンドが行われました。

 

1位 金沢市立工業高等学校「First」(989pt)

2位 香川県立飯山高等学校「飯山花笑み」(988pt)

3位 相愛高等学校「相愛 楓葉」(974pt)

4位 正則学園高等学校「TWINS」(950pt)

5位 福岡舞鶴高等学校「ききょう」(949pt)

6位 広島工業大学高等学校「サザンカ」(936pt)

 

準々決勝は各々が同時に個人作品を仕上げ、チームで得点を競います。今回用意されたのは、数本1組になった細い器。ボリュームを出すのが難しいため、軽やかでリズミカルな展開が期待されます。

フワッと横広がりでリズミカルな作品に仕上げたのは相愛高等学校「相愛 楓葉」。ひとりが2人分の花材を切り、息の合ったチームプレーを見せてくれました。対する福岡舞鶴高等学校「ききょう」は、これまでのダイナミックな作品とは違い、繊細にきれいに見せることを意識したそう。器に合わせた白い花が作品を引き立てます。

正則学園高等学校「TWINS」が見る場所によって表情の異なる作品で立体的に魅せれば、広島工業大学高等学校「サザンカ」は、赤からピンク、オレンジ、黄色と変化していく色のグラデーションを表現。ステージ上に小さな森ができあがっていくような、ワクワクする5分間でした。

モクレン、サクラ、レンギョウ……山に花が咲いていくように、徐々にステージ上が華やかになっていきます。一瞬一瞬で、次々に景色が変わっていくのも高校生花いけバトルの魅力。各チームの個性が少しずつ現れ、三者三様の作品で楽しませてくれます。

予選1位で通過した金沢市立工業高等学校「First」は、最後にバランスを崩してしまいます。ゴングが鳴った後も気丈に振る舞っていましたが、内心はさまざまな思いがあったでしょう。挑戦を続ける限り、アクシデントはつきものです。もしかしたら、危ないと感じた時点で守りに入る方法もあったかもしれません。それでも、歩みを止めずに、自分の目指す姿を貫いた5分間。そんな風に理想に向かっていく姿勢は、誰よりも勇敢で輝いていました。

3位決定戦は、ともに準決勝で器を倒してしまった「First」と「TWINS」。どちらも安定感のある口の広い器を選んで始まりました。同じように悔しい思いを抱え、両者が「ここで勝ちたい」という強い思いをぶつけきった戦い。ダイナミックにいける4人の男子学生たちの姿に胸を打たれました。

「First」は、赤を中心にしたパッションを感じるエネルギッシュで華やかな作品。高校生活最後の花いけバトルは、自分たちが得意とするダイナミックな作品で締めくくります。先の震災で通常の生活もままならないなか、香川まで遠征してくれた2人。復興への想いを胸に、精一杯戦ってくれました。

対する「TWINS」は、グリーンにブルーが煌めく、艶やかな作品。一瞬、グラっと揺れた時には先ほどの悪夢が頭をよぎりましたが、今回は落ち着いて立て直します。花いけを楽しむこと、自分らしくやり切ること。そんな高校生花いけバトルの真髄を感じられたラウンドでした。

決勝戦は昨年の優勝校・相愛高等学校の「相愛 楓葉」と、1年次から3回連続で全国大会に出場してきた強豪チーム「飯山花笑み」。みずみずしい感性と自分らしい感覚で、作品を通じて想いを伝えてくれました。

 

3年間のさまざまな想いを重ねて、チームで作り上げていく5分間。繊細な侘び寂びを感じさせる「相愛 楓葉」と、ダイナミックで勢いのある「飯山花笑み」。どちらも心を込めて、自分らしい花いけをしようと、持てる力を精一杯出してやりきってくれました。

優勝した「飯山花笑み」の2人。「1年生で全国大会に出た日からずっと全国優勝を目指していたので、すごく嬉しい」と黒川さん。秦さんは「たくさんの方が応援してくれてプレッシャーも大きかったけど、みんなに報告できるのが嬉しい」と話してくれました。

準優勝の「相愛 楓葉」の2人。「優勝はできなかったけど、花をいけることと出会えてよかった。最後にいけた作品は自分の中ではベストだと思う」と語ってくれました。悔いのない戦いをすること、それが高校生花いけバトルが何より大事にしてきたことです。全力で向き合ってきた日々の記憶はきっと、これからも人生の大事な場面で2人の背中を押してくれるはずです。

全チームの晴れやかな表情で幕を閉じた「2023全国高校生花いけバトル全国大会」。「花が好き」という共通項を通じて心を通わせる高校生たちの姿に胸が熱くなりました。

 

努力すること、仲間と協力すること、好きを追求すること、花いけに挑戦した3年間は、順位以上に大切なものを得られた時間だった思います。来年もまた個性あふれるチームに出会えることを楽しみにしています。そして、3年生の皆さんは、この経験を活かして、これからの人生で華やかに大きな花を咲かせてください。応援しています!