花いけだより

大会レポート✴︎全国選抜大会:決勝トーナメント編

予選に続いて行われたのは、決勝ラウンド進出をかけた敗者復活戦。予選6~8位の3チームから、それぞれ3年生の大将が出場しました。いずれも3年間花をいけ続け、高校生花いけバトルを牽引してきた強豪校のバトラーです。

身長よりも高い竹の頂点に、さらに流木をさしてダイナミックな作品に挑んだのは、⾹川県⽴飯⼭⾼等学校「飯山 桃花」の秦さん。予選ラウンドで器を倒してしまい、減点を課されたバトラーでした。10カウントが始まってからもグラグラと不安定に揺れる竹に、誰もが「もうダメかも…」と思った瞬間。3mに及ぶ竹がすっくと立ち、最も美しい姿を見せてくれました。最後の1秒まで、自分の花いけを信じていけきった高校生バトラーに訪れた、奇跡の瞬間でした。

勝者も敗者もステージ上で涙を流した白熱の敗者復活戦は、「飯山 桃花」の勝利で幕を閉じました。

決勝トーナメント1回戦は、予選ラウンドにも増してスピード感と想像力、そしてひらめきが求められるラウンドになりました。花をいける台が2台横付けされ、その上に大きな花器が2つ。横幅3.6mに及ぶ巨大なフィールドに、先鋒・次鋒がリレー形式でひとつの作品をいける勝負です。

2つの器でひとつの作品を作るには?竹や流木を横たえてつながりを生み出したチーム、高低差をつけることで立体的に空間を演出したチーム。それぞれの高校生バトラーが、勢いよく個性豊かにいけきりました。

続く準決勝。今度はチーム3人が1人ひとつの作品をいけていきます。両チーム合わせて6人が同時に会場を駆け巡る迫力のある展開に、観客席のOB・OGや保護者の方から大きな声援が飛び交います。またこのラウンドでは地元・岐阜県産のフランネルフラワーが指定花材として選ばれ、チームが練り上げてきたアイデアが光リました。予選1位通過の正則学園⾼等学校「RAook’s」は両脇の2作品にふんだんに色鮮やかなバラを使うことで、真ん中の1作品に生けた白色のフランネルフラワーが引き立てる構成に。会場となったぎふローズガーデンと、その中心で花をいける高校生バトラーを表現した、見事な作品でした。

決勝戦は「びーとるず」と「First」の男子チーム対決に。「びーとるず」が竹をすっと立てて縦に攻める作品を作れば、「First」は竹を横に使いゆったりとした流れを作り出すような構成で応戦します。互いに、花いけに情熱をかたむけてきた日々への思いを込め、それぞれが全速力で駆け抜けた5分間でした。

最後の得点発表前、痛いほどの緊張感が伝わってきました。それでも「自分の花いけをやりきった」と前を向く高校生バトラーの真剣な眼差しが印象的でした。

今年度の優勝チーム・岐阜県立岐阜農林高等学校「びーとるず」の3人。誰よりも大きな声を出してチームにエナジーをもたらした稲垣さん、涙に声を詰まらせながら「まずはチームメイトの2人に感謝です」と語った加藤さん。そして大将としてチームをまとめ上げ、物語のようにドラマチックな花いけを見せてくれた佐々木さん。地元・岐阜県に初めて「全国選抜大会」の優勝旗をもたらしました!

準優勝は金沢市立工業高等学校「First」。「悔しいけれど大きな舞台で花をいけられて楽しかった」という辰田さんと、決勝で最高得点の253点を叩き出し、圧巻のパフォーマンスを見せた山瀬さん、「大きな大会で2位になれたことを誇りに思う」という吉中さんの3人です。全力でやりきったからこその清々しい表情が印象的でした。

手に汗を握り、胸が熱くなる花いけが多く見られた今大会。もっと自分らしく、もっと新しく、まだ誰もやっていない表現を……。それぞれが自分の花いけに挑み続ける姿に、高校生花いけバトルを通して伝えたいことのすべてがつまっていたように思います。

 

これから始まる2023年シーズン。みずみずしい感性を存分に発揮した作品が見られることを楽しみにしています!