花いけだより

大会レポート:第4回全国選抜大会・決勝ラウンド

2024年8月1日(木)、岐阜県大垣市にて行われた「第4回高校生花いけバトル全国選抜大会」「第48回全国高等学校総合文化祭 花いけバトル部門」。午後は、予選ラウンドの上位5チームと、6〜8位の中から敗者復活戦を勝ち抜いた1チームの全6チームによる決勝ラウンドが行われました。

それぞれの思いをぶつけた敗者復活戦を経て、岐阜県立加茂農林高等学校「すぴあへっど」、愛媛県立今治西高等学校 伯方分校「メンズコーチ伯方」と戦った、金沢市立工業高等学校「First Lady」が決勝ラウンドへ。「今まで教えてくれた先生、花材をくれた祖父母、いろんな人に感謝しながらできた」という言葉に、会場からも大きな拍手が送られました。

 

一人だけどひとりじゃない。そんな信頼感が舞台に立つ高校生バトラーをより一層輝かせてくれるのでしょう。力を出し切ること、後悔のないように思いっきりやること、周囲に感謝すること……ステージを進むごとに、一人ひとりがこれからを生きていく上で大切なことを一歩ずつ学んでいっているように感じます。

準々決勝は、先鋒・次鋒のリレー方式で行われました。最初にスッと竹を立てたのは、広島工業高等学校「舞」。ところが最後の最後に隣の器が崩れてしまいます。無慈悲なゴングの音に、泣き崩れる2人……。それでも、崩してしまった相手に対し「信頼した仲間と作品を作ることができて良かった」とコメントした仲間の言葉に、このチームの強さと絆を感じました。

準決勝進出は絶望的に思えましたが、攻めることをやめず、自分たちらしくやりきった同チームがまさかの会場票を獲得します。失敗してもいい。心が動くのは技術じゃなくて情熱なんだ。そんな「高校生花いけバトル」の真髄を見た瞬間でした。

大阪府立園芸高校「園芸 明衣花」は、器を2つ寄せ、片方を斜めに倒した個性的な構成に。たくさんの花材を抱えて戻り、実のついた重い枝をなんとか立て、「今までで一番早く走れた」と無邪気な笑顔で勝ち進みました。

「花は美しい。それ以上に、花をいける高校生は美しい」そんな司会者の言葉が胸に迫る準々決勝。各々がたくさんの輝きを見せてくれたラウンドだったと思います。

準決勝は、指定花材として岐阜県産のオリエンタルユリが準備されました。ステージ前に並ぶ100本のユリ。それらを生かし、ユリを主役にした作品が評価されます。

両チーム3名ずつで一気にいける5分間。初戦を制したのは、正則学園高等学校「hash」でした。全国大会常連校ではありますが、準決勝での敗退も多かった同校。歴史が積み重なるほどに、このステージに立つことの重みも増していきます。先輩たちの想いも背負った選抜大会では、3人で1つの作品にできるよう、しっかりと作戦を練って練習を重ねてきました。

福岡舞鶴高等学校「とびうめ」は3人全員がかすみ草を使い、息の合った花いけで連作を披露。「練習の時から3人いけが一番楽しかったから、どうしてもこのステージで披露したかった」との言葉通り、抜群のチームプレーで会場を魅了し、決勝進出を果たします。

そして迎えた決勝戦。各々が好きな器を選び、個人戦3回勝負のスタートです。緊張の面持ちでゴングを待つ2人と、決意の表情を浮かべる1人。作品は個人でもチームとして戦う。そんな意思を感じさせる表情に期待が高まります。

「Hash」の土方さんは、流木を重ねてU字の器をかけ、そこに枝をいけていく繊細な作品に。しかし、途中で器が落ちてしまいます。その間にも、ダイナミックな投げ入れで魅せるのは「とびうめ」。迫るタイムリミットに緊張感が高まります。

時間が終わり席に戻った瞬間に泣き崩れるチームメイト。そんな彼の想いも背負った残り2人の戦いが始まりました。

続く2戦も、花の表情をよく見て、力を出し切った両チーム。「花いけバトル」の原点に立ち返り、真っ直ぐな視線で花を見つめ、精一杯やりきりました。最後は、704:602と圧倒的な差をつけて「hash」が優勝。数々のステージを経験している強豪校同士の決勝戦は、「創造の限界をこえろ。」というテーマのもと、まさに創造以上に創造を重ねたステージとなりました。

「悔しいけど、『hash』の作品を見たら、敵わなかったなって思います」と笑顔でインタビューに答えてくれた「とびうめ」。万が一、力を出しきれずに後悔が残ったとしても、精一杯やった後の後悔はきっと次のエネルギーになります。3人の顔には充実感があふれていました。

優勝した正則学園高等学校「hash」。今年は全国大会出場を果たせず、悔しい思いを抱えてきたはず。並々ならぬ思いを胸にステージに立ってくれた3人が、抜群のチームワークと個性で、きらりと光る作品を見せてくれました。

準優勝の福岡舞鶴高等学校「とびうめ」。周囲への感謝を忘れず、チームメイトへの敬意を持って、いつも笑顔で丁寧にいきいきといけていた姿が印象に残っています。

第3位、広島工業高等学校「舞」と大阪府立高等学校「園芸 明衣花」。勢いのある花いけで、会場を沸かせていた2チーム。次の大会でもまたここに帰ってきてくれることを楽しみにしています。

今大会でとくに輝いていた人に贈られる「特別賞」は、正則学園高等学校「hash」の下川光大さんに。賞状を授与される間、一つひとつの言葉を噛み締めていました。「この賞は僕ではなくて、一緒に戦ってくれたみんなやコーチ、家族、大会を運営してくださっているみんなのものだと思う」と話す下川さん。謙虚な人柄が垣間見えるような、主張と均整のバランスが取れた、美しくも力強く、個性あふれる花いけを見せてくれました。

ステージに立った45名の高校生たちが、全力で向き合った「第4回高校生花いけバトル全国選抜大会」。今大会は「第48回全国高等学校総合文化祭」の「花いけバトル部門」の第1回目でもありました。高みを目指すバトラーたちとともに、進化を続ける花いけバトル。高校生バトラーたちに負けないように、大会自体もチャレンジを続けていきます。